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ダヴィンチとミケランジェロの違い

イタリア・ルネサンスは人類史でも芸術が最も謳歌した時代の一つである。いや、イタリア・ルネサンスこそが人類において最上の芸術の時期と言ってもいいかもしれない。少なくともそれを超えるような天才たちが一堂に会するような、一塊の歴史的体験を私は発見することはできない。その中でも3大巨匠というものが存在するが、ラファエロは明らかに前者の二人に劣る。確かに彼は技術としては全2者を積極的にトレースし、ルネサンス技術の集大成を作ったと言えるだろう。そういう意味でも二人の大天才と並び称される栄光に浴することができているわけである。しかし二人の天才が人類史において切り開いてきた道程においては、ラファエロはある程度整備された道を歩いたと言えるだろう。これはややラファエロに対する不当な評価であるかもしれない。ラファエロとはまさしく天才的頭脳を持っており、それは絵画の技術だけでなく、学問の面でもその痕跡が報告されていルシ、容姿や社交性においても洗礼された美を持っていた。これはただダヴィンチとミケランジェロの業績が人類史においてあまりも異常であるというだけである。この二人はある意味人間としてのバグのような存在であり、本来人類史では予定されていなかった存在であると仮に言ってしまおう。その二人と並び称されるのが人間代表であるラファエロなのである。

さて、今回この人類史のバグであるダヴィンチとミケランジェロを扱うわけであるが、この二人のどちらがより優れていたかという問いはある意味ナンセンスである。ミケランジェロからすれば、彼が教皇への叛逆に身を置こうとも、ついにこれを許されてしまうほど教皇に愛されていたミケランジェロ。16世紀イタリアに身を置けば、まさにミケランジェロとは「神の如き人」であり、彼こそが最高の芸術家であると言えるだろう。しかし21世紀の射程からこの二人を捉えれば、レオナルドにその軍ぱいが上がると言って差し支えないだろう。それはある人類史の発展という側面から見れば、ダヴィンチがミケランジェよりも頭ひとつ抜けているということである。それはつまり、神から人間への発展という側面である。

二人の傑作を見ていこう。

まずミケランジェロは、ピエタ、ダヴィデ、そして最後の審判も描かれているシスティーナ礼拝堂の一連のフレスコ画である。特にシスティーナ礼拝堂は実際にその空間に身を置けばわかるが、まさにこれは神の如き作品である。それは文字通り巨大なのだ。時の最高権力者であるユリウス2世という巨大な権力と財力によって実現されたものだ。これを目にすればゲーテの言ったようにラファエロですら霞んでしまう。彼の描くアダムや神はまるで彼らがそこに存在しているかのような神聖さとリアリティの両方を兼ね備えている。だがこれは人類史の発展から見れば、まさに一つの功罪であると言えるだろう。つまり繰り返しキリスト教の権威を人々に信じ込ませる強力なプロパガンダとしてシスティーナ礼拝堂の巨大な絵画は存在しているのである。そう、ミケランジェロのほとんどの作品は教皇をパトロンとしてものであり、時代の巨大な権力者のために作られた作品なのである。人類史の発展という意味ではダヴィデ像こそがミケランジェロの最も進歩的な作品であったと言えるだろう。

一方でダヴィンチはどうであろうか。彼の数少ないほとんどの作品はキリスト教絵画に費やされている。代表作は「最後の晩餐」と「モナリザ」である。最後の晩餐は当時の科学的美の結晶である。当時の遠近法を基礎に、モデルの配役や仕草まで、まさに計算し尽くされた美である。それのみならず当時の慣例であった天使の輪っかをリアリズムに反するということでダヴィンチは取り除いてしまった。よりキリスト達を人間に近しい存在として描いていることから、神から人間への移行がすでにこの作品ではなされていることも重要である。そして何よりも「モナ・リザ」である。この世界でも最も有名な絵画は、人類史において重要な一枚である。モナリザとは聖書のどこにも存在しない。つまり彼女は現実の人間なのである。システィーナ礼拝堂に比べればごくわずかな小さなキャンバスの中に、ダヴィンチはまさに神も聖書も使わずにただの人間を最高の芸術の領域にまで押し上げたのである。つまり人類は、神や聖書にも勝るということを77×53の中にダヴィンチは実現してしまったわけである。まさにここから人類史は神ではない、人間の時代が始まったと言えるだろう。

ミケランジェロは巨大な精神性と天才性を持った人物であり、彼の偉大さに泥を塗るなどあまりにも愚かな行為である。しかしそれでも彼の作品はキリスト教の権威の威光下にあった。一方でダヴィンチは、ほとんど彼一人の独力でその異常な未開拓を切り開き、人類史を神から抜け出て人間として歩む道を示したのだ。

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